
2026年9月20日

家づくりの相談をしていると、たまにこんな話を聞きます。
「今月中に契約していただければ100万円値引きします」
「決算なので、今なら特別に150万円引けます」
「店長に掛け合ってきました。200万円までいけます!」
200万円ですよ。
普通の買い物なら、とんでもない値引きです。
でも住宅という数千万円の買い物になると、
「3,500万円が3,300万円になるなら、お得かも」
と思ってしまう。
もちろん200万円は大金です。
安くなるなら誰だって嬉しい。
でも私は、こう思ってしまいます。
その200万円、いったいどこから出てきたの?
そしてもう一つ。
じゃあ最初の3,500万円は何だったの?
家を一棟建てるには、たくさんのお金がかかります。
木材。
断熱材。
サッシ。
屋根材。
外壁材。
キッチン。
お風呂。
トイレ。
そして材料だけではありません。
基礎屋さん。
大工さん。
板金屋さん。
左官屋さん。
電気屋さん。
水道屋さん。
クロス屋さん。
たくさんの職人さんが現場に入ります。
当然、みんな仕事です。
材料屋さんにも支払いがあります。
職人さんにも手間賃を払います。
住宅会社にも、会社を維持するための経費が必要です。
それなのに、
「今日なら200万円引けます」
私は不思議なんです。
家の原価が今日だけ200万円安くなるのでしょうか?
木材屋さんが、
「今日契約したお客様なら安くしますよ」
と言ってくれる?
大工さんが、
「今月契約だから手間賃を下げますよ」
と言ってくれる?
そんなことは普通ありません。
だったら、その200万円はどこから出てくるのでしょう。
一つ考えられるのは、
最初から値引きを想定した価格になっていること。
例えば、本当は3,300万円程度で販売したい家を、
最初に3,500万円と提示する。
そして商談の最後に、
「200万円値引きします」
と言えば、
お客様は、
「200万円も得した!」
と感じます。
でも、もし最初から3,300万円で売るつもりだったとしたら?
それは本当に200万円得したのでしょうか。
私は商売をしている人間なので、
利益を取ることが悪いとは全く思っていません。
会社には利益が必要です。
むしろ利益がなければ、会社は続きません。
私が気になるのは、
価格の根拠が分からないこと。
3,500万円だったものが、
話をしただけで3,300万円になる。
だったら私は、
「最初の200万円は何だったんですか?」
と聞きたくなります。
さらに出てくるのが、
期限。
「この値引きは今日までです」
「今月のキャンペーンなので」
「決算なので今月中なら」
「この条件は明日には出せません」
こう言われたら焦りますよね。
200万円ですよ。
今日決めなかったら200万円損する。
そう思えば、
「じゃあ契約します」
となってしまう気持ちも分かります。
でも家って、
今日200万円安くなるから決める買い物でしょうか?
間取りは本当に納得していますか?
見積りの中身は確認しましたか?
標準仕様は理解していますか?
追加になりそうなものは確認しましたか?
住宅ローンは無理のない金額ですか?
その会社の家づくりを本当に信頼していますか?
数千万円の契約です。
私は、
「今日契約しないと損する」ではなく、「この会社なら任せられる」と思って契約してほしい。
そう思っています。
これも住宅営業では聞く話です。
営業担当者が、
「ちょっと待ってください。店長に相談してきます」
と言って席を外す。
しばらくして戻ってきて、
「本当は難しいんですが、今日決めていただけるなら特別に150万円まで値引きできることになりました」
……。
お客様からしたら、
「営業さん、頑張ってくれた!」
となりますよね。
もちろん、本当に社内で交渉している場合もあるでしょう。
全部が演出だなんて言うつもりはありません。
ただ、
値引き額の大きさだけで住宅会社を決めないでほしい。
大事なのは、
値引き前はいくらだったのか。
値引き後はいくらなのか。
ではなく、
その家の内容に対して、その金額が適正なのか。
だと思います。
もし最初から値引き分を見込んだ価格なら、まだ話は分かります。
でも本当に会社が予定していた利益から200万円を削るなら?
どこかで帳尻を合わせなければなりません。
会社が全部かぶるのか。
仕様を調整するのか。
下請け業者に協力を求めるのか。
職人さんの単価を下げるのか。
ここは外からは分かりません。
だから私は、
大幅な値引きを見ると、その裏側が気になります。
以前も書きましたが、私は職人さんの手間賃を必要以上に叩くやり方が好きではありません。
大工さんも、
基礎屋さんも、
左官屋さんも、
電気屋さんも、
水道屋さんも、
みんな生活があります。
材料費も上がっています。
燃料代も上がっています。
道具も必要です。
それなのに、
住宅会社がお客様へ大幅な値引きをしたから、
「職人さんも少し安くやってよ」
となったらどうでしょう。
私は、それは違うと思っています。
もちろん会社同士の価格交渉はあります。
企業努力も必要です。
でも、
良い仕事をしてもらいたいなら、適正な手間賃を払う。
当たり前のことだと思うんです。
お客様が、
「少しでも安く建てたい」
と思うのは当然です。
私だって買い物をするときは安いほうが嬉しい。
だから価格を比較することは悪くありません。
でも住宅の場合、
安く買うことだけを追いかけすぎると、その裏側で誰かが無理をしている可能性もある。
職人さんが予定より短い工期で仕上げる。
業者さんがギリギリの単価で仕事をする。
現場監督が必要以上の棟数を担当する。
そうなれば、私は最終的にお客様にとって良いことなのか疑問です。
家は工場で箱から出てくる商品ではありません。
最後は人がつくります。
ここは誤解してほしくありません。
値引きを一切しない会社が正義で、
値引きする会社が悪い。
そんな単純な話ではありません。
キャンペーンもあるでしょう。
仕入れ条件が変わることもある。
会社として値引きできる理由がある場合もあります。
私が大切だと思うのは、
最初からできるだけ適正な価格を出すこと。
最初に高い金額を出して、
最後に大きく値引きして、
「得しましたね!」
という売り方ではなく、
最初から、
「この家なら、このくらい必要です」
と伝える。
そのほうがお客様も安心して家づくりができると思っています。
これを書くと、
「じゃあ住宅会社は利益を取るなってこと?」
と思う方もいるかもしれません。
逆です。
私は、
住宅会社は適正な利益を取るべきだ
と思っています。
なぜなら家は、引き渡したら終わりではないからです。
5年後。
10年後。
20年後。
何かあったとき、
「ちょっと見てもらえますか?」
と連絡をいただく。
そのとき会社がなければ対応できません。
会社を続けるには利益が必要です。
スタッフの給料も払う。
事務所も維持する。
車も必要。
保険も必要。
アフターサービスにもお金がかかります。
だから私は、
会社がきちんと利益を残すことも、お客様の家を守るために必要なこと
だと思っています。
どれだけ立派な保証書を渡しても、
会社そのものがなくなってしまったら意味がありません。
だから私は、
無理な価格で仕事を取らない。
職人さんの手間賃を必要以上に叩かない。
必要なところには、きちんとお金をかける。
そして会社にも適正な利益を残す。
派手な話ではありません。
でも、
会社を長く続けることこそ、お客様に対する大きな保証の一つ
だと思っています。
もし住宅会社から、
「今日契約してくれたら200万円値引きします」
と言われたら、
もちろん嬉しいと思います。
でも、その場ですぐハンコを押す前に、
一度だけ考えてみてください。
「なぜ200万円も値引きできるんだろう?」
そして聞いてみてもいいと思います。
「この値引きは、どこを調整して出てきた金額ですか?」
仕様は変わらない?
工事内容も変わらない?
保証も同じ?
本当に今日だけ?
そこを確認してからでも遅くありません。
家は、
「いくら値引きしてもらったか」を競う買い物ではありません。
大切なのは、
支払った金額に対して、どんな家をつくってもらえるのか。
そして、
その家を誰がつくるのか。
その会社が建てたあとも責任を持ってくれるのか。
私はそちらのほうが、200万円の値引きより大切だと思っています。
だから、
「今日なら200万円引きます!」
と言われたら……
喜ぶ前に、一言。
「じゃあ、その200万円はどこから出てきたんですか?」
営業さん、
一瞬固まるかもしれません(笑)
恐ろしやー。
次回は、
について書こうと思います。
「銀行が4,500万円貸してくれるそうです!」
それは、
4,500万円の家を建てても大丈夫
という意味でしょうか?
住宅会社にとっての「借りられる金額」と、
家族にとっての「無理なく返せる金額」。
似ているようで、私は全く違うものだと思っています。
次回は、家を建てたあとの人生まで含めた「住宅予算」について書いてみます。