
2026年9月5日

前回は、
「モデルハウスだけを見て住宅会社を決めないで」
という話を書きました。
モデルハウスは、その会社があなたに「見せたい家」。
でも本当に見てほしいのは、
あなたの家族のために、その会社が最初に描いてくれたファーストプラン。
今回は、そのファーストプランについて、もう少し掘り下げてみたいと思います。
住宅会社との最初の打ち合わせでは、いろいろな希望を聞かれると思います。
「LDKは何帖ほしいですか?」
「和室は必要ですか?」
「子ども部屋はいくつですか?」
「書斎は?」
「ウォークインクローゼットは?」
「ランドリールームは?」
そして次の打ち合わせで、
「ご要望を全部入れてみました!」
と間取りが出てくる。
LDK20帖。
和室4.5帖。
子ども部屋2室。
書斎。
ファミリークローゼット。
ランドリールーム。
確かに、お願いしたものは全部入っている。
だから、
「私たちの希望をちゃんと考えてくれた!」
と思ってしまう。
でも私は、
希望した部屋が全部入っていることと、良い間取りであることは別の話
だと思っています。
土地には一つとして同じものはありません。
南側に何があるのか。
東西にはどんな建物があるのか。
道路はどちら側なのか。
隣の家の窓はどこにあるのか。
どこから人の視線が入ってくるのか。
朝日はどこから入り、夕日はどこから入るのか。
駐車場から玄関まで、どう歩くのか。
庭をどこにつくるのか。
同じ35坪の家でも、土地が変われば私は同じ間取りにはならないと思っています。
そして土地だけでもありません。
そこに住む家族の生活があります。
間取りを見るときに、私は図面の中で家族を歩かせてみます。
朝起きる。
顔を洗う。
着替える。
朝ごはんを食べる。
子どもが学校へ行く。
仕事へ行く。
買い物から帰ってくる。
買ってきた食材をしまう。
洗濯をする。
干す。
取り込む。
たたむ。
しまう。
お風呂に入る。
夜、家族でテレビを見る。
そして寝る。
図面の中でこれをやってみると、
間取りの良し悪しが結構見えてきます。
例えば、
洗濯機から干す場所まで遠い。
干した洗濯物をしまう場所が2階。
買い物から帰ってきて、玄関からキッチンまで家の中をぐるっと回る。
朝、洗面所に家族が集中する。
収納はたくさんあるけれど、使いたい場所にない。
数字だけ見れば立派な家なのに、
暮らしてみると毎日少しずつ面倒くさい。
家は一日だけ使うものではありません。
その「ちょっと面倒」が、10年、20年、30年続きます。
だから私は、帖数よりもこちらのほうが大事だと思っています。
間取りを見ていると、
「LDKは南側」
「南側に大きな窓」
という図面をよく見ます。
もちろん基本としては間違っていません。
でも、その大きな窓の向こうに何があるのでしょう?
道路だったら?
隣の家の玄関だったら?
人がよく通る場所だったら?
せっかく大きな窓をつくったのに、外からの視線が気になって一日中カーテンを閉めている。
これでは何のために大きな窓をつけたのか分かりません。
逆に、
「ここに窓があったら気持ちいいだろうな」
という場所もあります。
庭の木が見える。
空が見える。
朝日が入ってくる。
家の中から外へ視線が抜ける。
窓は大きければいいのではなく、その窓から何が見えるかまで考える。
私はこれも設計だと思っています。
これも結構大切です。
図面ではLDK20帖。
「20帖あれば広いですね!」
と思います。
でも、そこに家具を置いてみてください。
ダイニングテーブル。
椅子。
ソファ。
テレビ。
場合によっては収納。
すると、
「あれ?」
となることがあります。
椅子を引いたら通れない。
ソファを置いたら窓をふさいでしまう。
テレビを見るためにソファを置くと、通路がおかしくなる。
20帖あるのに、なんだか狭い。
逆に18帖でも、家具配置や視線の抜け方を考えて設計すれば、広く感じるLDKはつくれます。
だから私は、
「LDKは何帖ありますか?」だけで間取りを判断してほしくありません。
大切なのは数字ではなく、
そこでどう暮らせるか。
です。
他社さんと比較しているお客様が、ファーストプランを持ってきてくださることがあります。
もちろん私は、
「この間取りはダメです」
なんて言いません。
図面だけでは分からない事情もありますから。
でも、話を聞きながら図面を見ると、
「なぜ玄関はこちらなんだろう?」
「どうして窓がここなんだろう?」
「この収納、何を入れるんだろう?」
「この家事動線、ご家族の希望と合っているのかな?」
と思うことがあります。
そこでお客様に、
「この配置になった理由って、何か説明がありました?」
と聞いてみる。
すると、
「特にありませんでした」
ということがある。
私は、ここが一番気になります。
私は間取りには、
一つひとつ理由が必要
だと思っています。
なぜ玄関をここにしたのか。
なぜLDKをこちらに向けたのか。
なぜこの窓をここにつけたのか。
なぜ収納をここにつくったのか。
なぜキッチンをこの向きにしたのか。
もちろん、すべてが100点になる間取りなんてありません。
土地にも予算にも制限があります。
何かを優先すれば、何かを諦めなければならないこともあります。
だからこそ、
「なぜこうしたのか」を説明できることが大切
だと思っています。
「なんとなくここです」
では困るんです。
数千万円の家ですから。
ここまで書くと、
「最初の間取りから完璧じゃないとダメなの?」
と思われるかもしれません。
そんなことはありません。
私だってファーストプランから変更します。
むしろ、お客様と話をして変わっていくのが普通です。
最初の打ち合わせだけで、ご家族の生活を100%理解するなんて無理です。
でも、
ファーストプランに、その設計者がどれだけ考えた跡があるか。
ここは見てほしいと思います。
要望された部屋をパズルのようにはめ込んだだけなのか。
それとも、
土地を見て、
周辺を見て、
家族の話を聞いて、
そこで暮らす姿を想像して、
「このご家族なら、こう暮らしたら楽しいんじゃないか」
と考えたのか。
図面をじっくり見ると、結構違いが出ます。
住宅会社から間取りを提案されたら、
ぜひ聞いてみてください。
「なぜ、この間取りになったんですか?」
これだけです。
そして、
「なぜLDKはこちらなんですか?」
「なぜこの窓はここなんですか?」
「なぜ収納はこちらなんですか?」
気になったところを聞いてみる。
そこで、
「南側だからです」
「一般的にこの配置なので」
だけで終わるのか。
それとも、
「ご主人が朝早く出勤されると聞いたので……」
「奥様が洗濯を一階で完結させたいとおっしゃっていたので……」
「こちらのお宅からの視線を避けながら、庭が見えるように……」
「お子さんが帰ってきたとき、LDKを通るように……」
そんな説明が出てくるのか。
その答えに、その会社がどれだけ自分たちの暮らしを考えてくれたのかが表れると思います。
私は間取りというのは、
単純に部屋を並べた図ではないと思っています。
そこには、
朝の風景があって、
家族の会話があって、
洗濯があって、
料理があって、
子どもが走り回って、
休日にはソファでゴロゴロする。
そんな毎日の生活があります。
だから、
LDK20帖。
4LDK。
収納○帖。
それだけで家を判断しないでください。
「この図面の中で、自分たち家族が暮らしている姿が想像できるか?」
ぜひ一度、考えてみてください。
ファーストプランは完成形ではありません。
でも私は、
最初の一枚に、その住宅会社があなたの家づくりをどれだけ真剣に考えているかが出る
と思っています。
モデルハウスを見るのも大切。
設備を見るのも大切。
価格を見るのも大切。
でも、注文住宅を建てるなら、
「自分たちのために、どんな家を考えてくれたのか」
ここも住宅会社選びの大切な判断材料にしてほしいと思います。
次回は、
【第3話】最初の見積りから300万円アップ。それ、本当に「想定外」ですか?
について書こうと思います。
最初は予算内だったはずなのに、
打ち合わせをするたびに10万円、20万円、30万円……。
そしてまた出てくる、
「せっかくですから」
恐ろしやー(笑)
次回は、家づくりで金額が膨らんでいく仕組みについて書いてみます。