
2026年8月30日

住宅会社を探し始めると、まずモデルハウスや展示場を見に行く方も多いと思います。
大きな吹き抜け。
開放的なLDK。
おしゃれなキッチン。
考えられた照明。
格好いい外観。
きれいにコーディネートされた家具。
「うわぁ、こんな家に住みたい」
そう思いますよね。
私も住宅をつくる側の人間ですから、モデルハウスを見ると勉強になります。
でも、家づくりを考えている方には、一つだけ知っておいてほしいことがあります。
そのモデルハウスを設計した人が、あなたの家も設計するとは限りません。
これ、意外と知らない方もいると思います。
当たり前ですが、住宅会社はモデルハウスに力を入れます。
だって、お客様に
「この会社で建てたい」
と思ってもらうための建物ですから。
会社によっては、外部の建築家やデザイナーに依頼してモデルハウスを設計することもあります。
インテリアコーディネートにも力を入れる。
照明にもこだわる。
家具も入れる。
生活感のない、とても素敵な空間が完成します。
それ自体は何も悪いことではありません。
問題は、
「モデルハウス=自分たちが実際に建ててもらえる家」
と思い込んでしまうことです。
実際のお客様の家になると、モデルハウスを設計した人とは別の社内設計担当者が間取りを描くことがあります。
会社によっては、営業担当者が間取りを描く場合もあります。
ここで誤解してほしくないのですが、
営業が間取りを描くこと自体が悪いと言っているわけではありません。
設計資格を持っている営業もいますし、経験豊富で素晴らしい間取りを描く人もいます。
大切なのは肩書きではありません。
私が見てほしいのは、
「この家族の暮らしを、どこまで考えて描いているのか」
ということです。
私は仕事柄、他社さんが描いた間取りを見る機会があります。
住宅会社を比較しているお客様が、
「他社では、こんな間取りを提案されています」
と図面を持ってきてくださることがあるからです。
もちろん、図面一枚を見ただけで他社さんの設計を否定するつもりはありません。
その間取りになった理由があるかもしれませんし、お客様からの要望があったのかもしれない。
でも、中には正直、
「本当にこのご家族のために考えたのかな?」
と思ってしまうファーストプランもあります。
希望した部屋は入っている。
LDKもある。
収納もある。
数字だけ見れば要望通り。
でも、
朝起きてから家族がどう動くのか。
洗濯物をどこで干して、どこにしまうのか。
買い物から帰ってきて、荷物をどこへ持っていくのか。
ダイニングテーブルやソファを置いたら、どうなるのか。
窓の向こうには何が見えるのか。
道路から家の中はどう見えるのか。
太陽はどちらから入ってくるのか。
そういった「そこで暮らす家族の姿」が、図面から見えてこない。
そんな間取りを見ることがあります。
「これ、かなり急いで描いたのかな……」
「今まで建てた家の間取りをベースに、少し変えただけなのかな……」
と感じることもあります。
そして、そんなファーストプランから打ち合わせを始める。
すると、
「やっぱりLDKを広くしたい」
「収納が足りない」
「家事動線を変えたい」
「キッチンはこちらがいい」
「窓を大きくしたい」
「外観をもっと格好よくしたい」
「ここに造作を入れたい」
どんどん変わっていく。
最終的には、
ファーストプランから180度違う家になる。
そんなお客様もいらっしゃいます。
もちろん、ファーストプランは最初の提案です。
そこからお客様と話し合って、どんどん良くしていく。
それは普通のことです。
私だって最初に描いた間取りを修正します。
でも、私はここで一つ気になることがあります。
間取りが大きく変われば、当然いろいろなものが変わります。
床面積が増える。
窓が増える。
窓の大きさが変わる。
屋根の形が変わる。
設備が変わる。
収納が増える。
造作が増える。
仕上げが変わる。
当然、金額も変わります。
ということは、
最初に提示された見積りは何だったの?
と私は思うんです。
ファーストプランと一緒に、
「この間取りなら、このくらいで建てられます」
と言われた。
だから安心して話を進めた。
ところが打ち合わせを重ねるたびに金額が上がっていく。
10万円。
20万円。
30万円。
一つひとつを見ると、数千万円の家づくりの中では小さく感じてしまいます。
でも10個重なれば100万円。
20個重なれば200万円です。
家づくりをしていると、金額が上がりやすい言葉があります。
「せっかくですから」
恐ろしやー。
「せっかく家を建てるんですから、こちらにしませんか?」
恐ろしやー。
そして、
「一生に一度ですから」
恐ろしやー。
さらに強いのが、
「あとで後悔したくないですよね」
恐ろしやー。
いや、言っていることは分かるんです(笑)
私だって、せっかく家を建てるなら良い家にしてもらいたい。
でも、
「せっかくだから」
を全部採用していたら、予算はいくらあっても足りません。
住宅営業は、お客様の年収や自己資金、現在の借入などを聞けば、
「このご家族なら、住宅ローンはこのくらいまで借りられそうだな」
というおおよそのラインが見えてきます。
もちろん、すべての住宅会社が借入限度額まで予算を上げようとしている、という話ではありません。
良心的な営業担当者もたくさんいます。
ただ、ここで絶対に間違えてほしくないのは、
「銀行が貸してくれる金額」と「無理なく返していける金額」は違う
ということです。
住宅ローンが通ったから大丈夫。
ではありません。
家を建てたあとも生活は続きます。
子どもの教育費。
車の買い替え。
旅行。
外食。
趣味。
そして老後。
家を建てるために人生があるわけではありません。
家は、家族が楽しく暮らすためのものです。
だからモデルハウスは、ぜひ見てください。
たくさん見てもいいと思います。
デザインや設備を見るのも楽しいです。
ただ、
「このモデルハウス、格好いい!」
だけで住宅会社を決めないでください。
私なら一つ質問します。
「このモデルハウスを設計した方が、私たちの家も設計してくれるんですか?」
そしてもう一つ。
実際に自分たちの土地、自分たちの予算、自分たちの要望を伝えたとき、
どんなファーストプランを出してくれるのか。
私はこっちのほうが大切だと思っています。
モデルハウスが素敵なのは当たり前です。
住宅会社が力を入れてつくった建物なのですから。
でも皆さんが建てるのは、モデルハウスではありません。
限られた土地があって、
限られた予算があって、
家族それぞれの生活があって、
その中で一番いい家を考える。
それが注文住宅だと私は思っています。
だから住宅会社を選ぶときは、モデルハウスだけではなく、
「この会社は、私たち家族のためにどんな家を考えてくれるんだろう?」
そこを見てください。
モデルハウスは、
その会社があなたに見せたい家。
ファーストプランは、
その会社があなたのために考えた家。
私は後者にこそ、その住宅会社の家づくりに対する姿勢が出ると思っています。
そして打ち合わせ中に、
「せっかくですから……」
と言われたら、
一度、電卓を叩きましょう(笑)
恐ろしやー。
次回は、
【第2話】そのファーストプラン、本当にあなたのために描いた間取りですか?
について書いてみようと思います。
間取りは、部屋数と帖数が合っていればいいわけではありません。
私が他社さんの図面を見るとき、どこを見ているのか。
次回はそんな話を書きます。